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都内とは思えぬ美しく雄大な自然が広がる奥多摩。新宿から90分ほどで、四季折々の表情を見せる奥多摩湖や多摩川沿いの渓谷美を眺めながらの散策本格的な登山が楽しめると、連日賑わいを見せる人気観光スポットです。

そんな奥多摩の、とある小さな小さな無人駅。奥多摩駅のひとつ隣でありながら、一日の乗降人数がわずか70~100人程度という「白丸駅(しろまるえき)」が、“秘境駅”として注目されているのはご存知だろうか?

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正直、鉄道に疎い私は、白丸駅の名前すら知らなかった。取材として訪れることが決まるまでは“秘境駅”の定義すらわからず、Wikipediaの「山奥や原野など、人里から離れた箇所に所在する鉄道駅を指した呼称」という解説を見たときは、(とんだ取材先を任されてしまった)と落胆した。

そもそも、なにもないのにどうして行くんだろう?「ほんとうだ!なにもなかった!」と納得して帰るとでもいうのだろうか?なんて記事にしずらい取材先なんだろう……。文句たらたら、といった具合だ。

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  • 青梅線で「白丸駅」へ

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    そんな調子にもかかわらず、目覚ましをかけずとも梅雨時期の蒸し暑さに自然と昼前には目を覚ました。日が暮れちゃマズイ。と急ぎ足でJR中央線「立川駅」からのびる青梅線に飛び乗り、ひとまずついたのは「青梅駅」。ここから奥多摩駅行きの電車に乗り換え、秘境駅を目指す。

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    ここで無計画に家を出たゆえの誤算が生じた。1分1秒の間隔で電車や人々が行き交う都会とは違い、30分に1本の間隔で電車が訪れる「青梅駅」で足止めを食らったのだ。レトロな雰囲気のホームの待合室で、お菓子片手に電車を待つ。このゆっくりとした時の流れは、“旅気分”へ気持ちがシフトするきっかけにもなった。

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    電車に乗ってもそれは変わらず、時間帯もあってか、さながらローカル線の車内にはポツリポツリと人が乗ってきたかと思えば、ポツリポツリと降りていく。

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    そのあいだも電車は山間をひた走る。子供のように車窓にかじりつく私の目の前は、あのとき十分のどかに思えた青梅の駅すら栄えていたのだと確信するほど、これといった目印が“”以外なにもなくなっていくのだ。

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    30分もすると「白丸駅」の案内が車内に響く。視線を移した電光案内板には、4両しかない電車のイラストとともに「白丸」の文字が写し出されていた。未知なる“秘境”を前に、スッとかしこまる思いと高揚が入り混じった。

    白丸駅

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    ドアの開閉ボタンを押し、下車。それまで乗っていた電車がトンネルに吸い込まれ姿を消すと、鳥のさえずりと木々のざわめきしか聞こえない秘境駅の姿がくっきりと現れる。

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    なーんにもない。新宿駅の「ものや人が多すぎてわからない」じゃない。ここも同じ東京都のはずなのに、人もいない、なにもない、いったいここがどこなのかわからない。駅のホームの中に、民家のものと思わしき門が建っていて、そこから改札を通らず家に入れる作りになっていたりする。どこからどこまでが駅なのかすらわからない。

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    ひとまず見つけた白丸駅の駅看板との記念撮影にいそしむあいだ、私なんかとともに降り立ったカップルは、改札を通らず民家の庭に入ってしまい、気づいたのか慌ててホームへ引き返していた。

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    わたしが「きっぷ回収箱」にきっぷを入れる、無人駅ならではの魅力を伝える写真を撮影しているあいだ、そのカップルは「ICカードの残高が足りないんですけど、チャージの機械がないから改札から出られないんです……。」と駅員に繋がる電話でSOSを求めていた。彼氏、必死に説明してた。彼女、後ろでモジモジしてた。

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    あわてんぼうカップルのてんやわんやに「アオハルかよ」と、澄んだ空気で大きく深呼吸。わたしゃこれからどうしようかねえ。

    自然

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    駅前は2つに道が分かれている。乗降客数の少ない“秘境駅”には指標となる人はおらず、スマホの電波も頼りない。地図アプリは真っ白の画面の中を現在地のマークだけがチカチカと表示されていた。
    あのカップルは坂道を選んだから、わたしは階段道を……。と降りていったが、結果どちらも奥多摩駅へ続く青梅街道に差し当たる小道だったみたいで、降りきったところでカップルと鉢合わせた。なんだか勝手に気まずい気持ちになった。

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    街道沿いは山深く、こうも緑に包囲されるとなんだか取り残された気分だ。とはいえ、私の中できちんと計画は立てていた。白丸駅から奥多摩駅は一駅だから、寄り道がてら奥多摩駅を目指して散策してみようといった具合に。というよりは、インターネットで公開されている「奥多摩駅を目指して歩く鉄道ファンの人」の書記の多くがそうだったからである。

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    その多くの書記にあったとおり、駅前の街道沿いに“さらなる秘境”へ誘うような、含みをもった階段が現れる。

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    下調べが功を奏したのもあるが、「おいで、おいで」と言わんばかりの薄暗い階段を降りると、うっそうとした斜面沿いに置かれた色とりどりのカヌーと、木々の間から覗くエメラルドグリーンが目に飛び込む。

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    斜面を抜けると「そういうことか!」と声が出た。あのエメラルドグリーンは木々を映す白丸湖の水面で、その上をカヌーが優雅に走っていたのだ。普段なら手持ちぶさたになって早々に引き上げるんだろうけど、水を切るパドルの音だけが響く空間は心地よさを感じた。
    しばらく佇んだあと、同行者を街道に置いてきたことを思い出し、急いでもと来た道を戻った。

    ただひとつのレストラン

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    青梅街道は、たまーにリュックを背負った登山客や車が行き交うものの、わたしと同行者しかいない空間が往々にして現れる。道は舗装されているから足元に気を取られる必要がないし、遠足のように班長なんていないから自由だ。そうするとちょけずにはいられなくて、飛んだり跳ねたり後ろ走りを披露しては、「ダハーッ!」なんて下品な笑い声も漏れる。もはやおもしろくないこともおもしろい。「空気がおいしい」という人の気が知れないくせに、「なんだか空気がおいしいや!」と口走る具合だ。

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    しばし歩くと街道沿いに現れた「美味しくてごめんチカツ棒 六白黒豚(400円)」のキッチンカーを目にした途端、(空気よりメンチのほうが5万倍おいしいだろ)という普段の花より団子思想を取り戻した。

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    本格的な手作り味噌の詰め合わせや、奥多摩の天然水など、心と身体に優しい味の便りが揃う「手作り工房 四季の家」もキッチンカーの対面にあった。そういえばわたし、おなかペコペコだ。

    お肉カフェ「アースガーデン」

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    キッチンカーの隣りにあった案内看板の“お肉カフェ”の文字に「そうこなくっちゃ!」と手を叩く。どの書紀も駅や自然に関する情報に特化していたから、食に関してはあまり期待をしていなかったが、白丸駅周辺にはこの1店舗のみレストランも存在する。

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    寄り道は楽しい。食が絡むともっと楽しい。街道沿い、数馬峡橋(かずまきょうばし)の先にあるという「アースガーデン」を目指そう。お肉カフェ発見を記念した写真も忘れずにね。

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    ちなみに、この橋を渡る人は、大きく2種類に分かれるそうですよ。それは、“腹をすかせた者”と“腹を満たした者”なんですけど、相容れないように思える両者に、ただひとつ共通点があるんですって。そう、“橋の向こうを指差す”という行動なんですね。

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    あくまで推測ですけどね、眼前に広がるエメラルドグリーンの白丸湖の景色に目を奪われるのはもちろん、「ねえ!あそこに見えるアレ、さっきの階段降りて出たところ!」と興奮気味に指差すんですよ。「どこ?」「こっち!左!」「へー」と。そしてとりあえず写真の1枚でも撮っといちゃうんだと思うんです。

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    なんて実体験はさておき、橋を渡るとすぐ「アースガーデン」がお目見えした。こういう秘境だと“営業中”の文字を見るだけで安堵する。東京都なんだけどなあ。

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    ウッド調の店内は白丸の自然と同化していてあたたかい雰囲気だ。

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    緑豊かな渓谷を望めるテラス席も。

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    森林浴をしながらいただく、白豚とはまったく違う“旨み”と“食感”が自慢の「六白黒豚」を使用したオーガニック料理は、訪れる人の心とお腹を満たします。

    (※クリックで拡大)

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    左上:「アワビ茸のからあげ」400円
    食感の良いクセのない美味しさのアワビ茸をカラッと素揚げ。ビールとの相性抜群!

    右上:「低温調理ロースの炙り」600円
    柔らかく水分を逃がさない低温調理法でジューシーに仕上げた六白黒豚のロースの炙りは、ワサビとお塩で素材の味わいそのままに。

    左下:「究極のハンバーグセット」1,760円
    六白黒豚の美味しさを活かすべく、試作を重ね誕生した究極のハンバーグ。あえてお塩でいただくフワフワジューシーハンバーグはやみつきになる美味しさ。

    右下:「低温調理とんかつ(ヒレ)セット」750円
    六白黒豚のヒレ肉を使用したとんかつは、低温調理法でさらに柔らかくジューシーに。オーガニックでありながら満腹感のある一品です。

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    食い意地が張っているから、頼んだあとはいつも「こんな頼まなくてよかったな」と思う。でも、口に頬張り、ハートランドビール(700円)を流し込むと、痺れるほどに胃から全身へ旨みが染み渡る。肉なんかとくにそうだ。食事というのはもはや一種の祭事だよ。

    営業時間:11:00~16:00
    定休日:年中無休
    場所:東京都西多摩郡奥多摩町白丸361-1

    秘境の地

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    私は食事でエネルギーを使い果たした。

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    食事とは普通、活力を生み出すものであるが、わたしの食に対する真摯な姿勢は仇となった。食べすぎて胃がはちきれそうなのだ。

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    「こんなときこそ笑顔を絶やさず手と手を取り合い、たくさん歩いて胃と腸を活性化させようよ!」食に対して同じ思想を持つ同行者にけしかける。それは自分への暗示でもあった。

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    あいかわらずお腹は苦しいけれど、多摩川を眼下に自然の中を闊歩する。前日の雨が染みた木の匂いが鼻を抜けたとき、改めて「空気がおいしいかも?」と感じてみたりもした。

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    とはいえここは僻地だ。傾いた案内板。白紙に等しい時刻表。この先が“無”であることを予期させる最終コンビニや最終ガソリンスタンドの看板。秘境はときとしてわたしたちに不安を抱かせる。

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    まっすぐ歩けば奥多摩駅に辿り着く。でも、道沿いの地蔵を見つけたとき「無事に帰れますように」なんて手を合わせたのは、東京にいることをすっかり忘れていたからだろう。

    奥多摩温泉「もえぎの湯」

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    “秘境”は他の観光地に比べたらなにもないけれど、なにもないからこそ見つけたときの喜びがある。奥多摩駅へ抜ける小さなトンネルに差し掛かる手前で、「もえぎの湯」という奥多摩温泉を見つけた。

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    この日は時間が遅かったから、タオル片手にもえぎの湯から出てくる登山客を横目に通り過ぎてしまったけれど、足湯くらい入っておけばよかったと激しく後悔。源泉100%の温泉で汗を流したらどんなに気持ちよかっただろう。

    営業時間:【4月~6月】9:30~20:00【7月~9月】9:30~21:30【10月~11月】9:30~20:00 【12月~3月】9:30~19:00
    定休日:月曜日
    入場料:【大人】780円【小学生】410円【心身障害者】大人460円/小人200円【幼児・未就学児】無料
    場所:東京都西多摩郡奥多摩町氷川119-1

    奥多摩駅まで

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    「そういえば、白丸駅付近で道行く車に『もえぎの湯はどこですか?』って聞かれて、たまたま目の前にあった案内看板の通り『あと2kmみたいですよ~』って答えたよね。あのとき『わたしたち、現地の人に見えたんかな~?』なんて笑いあったけど、思えば2kmしか歩いてないってことだよね。たくさん歩いた気がするのになあ。」

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    トンネルを抜けると奥多摩駅まではもうすぐそこで、先ほどとはうって変わり商店や民家が立ち並ぶレンタルサイクルショップを見つけて、「次来たときは奥多摩駅で自転車を借りて、白丸駅までサイクリングして温泉に入ろうよ!」と、すでにまた訪れたときの話で盛り上がるふたりだった。

    まとめ

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    ゴールの奥多摩駅に到着するとうれしくて、疲れも忘れてはしゃいだ。とはいえ、ほんとうに疲れているかと聞かれたら、食事をして小一時間歩いただけだから、「えへへ」と一言ごまかしてしまいそう。でも、なにしに行ったのと聞かれたら、「自然に触れて、たくさん食べてきたよ」と達成感に包まれた表情で答えることができるかもしれない。

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