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こんにちは!東京ルッチのかきのるいです。

今回も東京宝島と呼ばれる11の島々の中から、伊豆諸島に位置する新島をピックアップしていきます!

東京宝島」とは?

東京都の南に位置する11の有人離島(大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島、父島、母島)の総称。これらの島々には、豊かな自然景観や海洋資源、特産品、歴史・文化などの“宝物”が数多く存在しています。東京都ではこうした“宝物”や隠れた魅力を掘り起こし、一層磨きをかけ、広く発信していくことで、島のブランド化に向けて取り組んでいます。 

前回の記事では、新島のモヤイ像観光スポットを巡り、旅行先として楽しめる新島のポイントを紹介しました。

そんな新島に今、移住希望者が増えているとのこと!

若くから新島に引っ越し、育児やマルチワークをこなす方都内のお店をたたみ、新島で新しくお店を構えた方Uターンをして新島で起業した方と、一言で移住と言えど理由は様々。

今回は、実際に移住した3名の方々にお話を伺ってきました。

数日間滞在しただけでも、人の親切さや明るさに触れることが多かった新島。

インタビューを通してモヤイの「助け合う、支え合う」という精神を、さらに感じることができました。

都内では考えられないようなうらやましい生活や、その前にあった苦労なども伺えたので、ぜひご覧ください!

移住してきた方にインタビュー!新島での生活を聞いてみた

2児の母&マルチワーカー 佐藤晃子さん

佐藤晃子さんプロフィール写真

佐藤晃子(さとう あきこ)さんプロフィール

東京都八王子市出身。新島に移住をして20年余り。
30歳からプロボディボーダーとして活躍し、ワールドツアーに参加。2014年にプロを引退し、新島でボディボードスクールとSUPスクールで講師をする。
現在はスクールと同時に新島の名産、くさや作りの仕事や調理の仕事などのマルチワークをこなす。

新島でボディボードのスクールを開く佐藤晃子(さとう あきこ)さん。

旅行の際に行った新島の羽伏浦海岸で、初めて触れたボディボードでプロにまで登り詰めて、今では育児やマルチワークをしながら新島での生活を堪能しています。

そんな佐藤さんの新島ライフに迫ってみましょう!

真っ青な海で直感した「新島に住む」ということ

羽伏浦海岸の表彰台に立つ佐藤さん
▲羽伏浦海岸の表彰台。夏にはボディボードやサーフィンが盛んに行われている。

かきの:佐藤さんが新島を好きになったきっかけを教えてください。

佐藤さん:私、19歳の時ぐらいにフリーターで何もやりたいことがなくフラフラしていたんです。

佐藤さん:その時はバンドのライブに行くのが趣味で、そこで知り合ったのが(新島の和菓子屋の)紅谷(べにや)さんの親戚の子だったんです。その子に新島行かない?って言われて行きました。

前浜海岸通り
▲前浜海岸通り

佐藤さん:初めて行ったときは前浜で海水浴楽しんだんです。プライベートビーチみたいで、真っ青な海見て、誰もいなくて。初めて来たときの直感でおばあちゃんになったらここに住みたいと思ったんですよ。

佐藤さん:次の年は羽伏浦に行って、当時は海の家があってそこでレンタルボードを借りて初めて(ボディボードを)やったら楽しくて!

佐藤さん:新島から帰ってきた後バイトしていたら「見たことある人が入ってきた!」と思って。その人が(新島に誘ってくれた)友だちの親戚の紅谷の方だったんです!

運命を変えたボディボードとの出会い

紅谷の店頭
▲雑貨屋とカフェが併設されているお店「紅谷」(べにや)

かきの:そんなことってあるんですね!運命的!

佐藤さん:「バイト紹介してもらえませんか?」って(紅谷の方に)聞いたら紹介してくれて、新島に行く前の夜に(ボディボードの)セット買って。

佐藤さん親には1年くらいで帰るって言ってたんですけど、自然相手のスポーツで教えてくれる人もいないし、独学で強風の日も雨の日も、上達するまでひたすら海に入り、気付いたら10年経っていました。

ボディボードで波に乗る佐藤さん
▲ボディボードで波に乗る佐藤さん

佐藤さんアマチュア時代、プロになるチャンスもあったのですが、当時は興味がありませんでした。そんな中で出会った元アスリート(モーグルスキーヤー)で後の旦那さんに、「実力があって自分が頑張ってきたスポーツなのに、勿体ないからプロになったら?」と言われたことをきっかけにプロに挑戦することになりました。

佐藤さん30歳でプロになり、2年目でいきなり優勝!ただ、子どもは欲しかったので5年間と決めてプロツアーに参戦していました。

何足ものわらじを履く2児の母の生活

インタビューを受ける佐藤さん

かきの:30歳からプロボディボーダーとして活躍されて、35歳でプロの道からは引退されたんですね。その後のお仕事は何をされているんですか?

佐藤さんずっとボディボードスクールだけやってたんですけど、羽伏浦の波が割れなくなっちゃって。(※波が割れない=マリンスポーツをするのにいい具合の波が来ないということ)
去年は夏に1件もボディボードスクールを開催できなかったんです。観光客の人に申し込みしてもらってキャンセルするっていうのがすごい心苦しくて。

佐藤さん:それで、せっかくの時間を楽しんでもらいたいなと思って始めたのがSUPスクールで、資格を取ったんです。

かきの:SUPってボードの上に立ってパドルを漕いで進むアクティビティですよね。どちらも夏のイメージですけど、オフシーズンはどうしているんですか?

佐藤さん:メインが観光客なので、春から秋までって感じです。 冬は季節風が吹くので、観光客も本当に来ない(笑)。

かきの:ではオフシーズンのときは育児一本で生活しているんですか?

佐藤さん新島って3歳未満児の保育園の受け入れが厳しくて、子供が小さいうちは仕事ができないんです。今年の春から下の子が保育園に入ったのでのんびり過ごそうかなって思いきや…

佐藤さん:池太商店で「くさや作り興味ある方やりませんか?」って魚を捌いてる写真をアップしていたのを覚えていたんです。保育園の給食を作る仕事も申し込んでいたけど、くさやの仕事にも興味があって。

かきの:家事や育児に加えて仕事まで、すごい充実度だなと思います。どんな1日のスケジュールで動いているんですか?

佐藤さんのタイムスケジュール円グラフ

佐藤さん:6時に息子(上の子)が起きてくるんですけど、新島は内地の小学校より始まるのが早いみたいで。7時50分くらいからかな。私は6時から朝ご飯の準備したり。

佐藤さん:娘(下の子)を保育園に連れていくんですけど、給食の仕事は8時からなので、7時50分くらいに出発してる!お魚(くさや)の仕事のときも大体同じくらいです。

インタビューを受ける佐藤さん

かきの:夕食はみんなが帰ってきてからですか?

佐藤さん:夕飯は大体18時くらいですかね。太鼓が20時からなんでその前に!

かきの:太鼓?!クラブ活動が盛んだといろいろな場所で伺っていますが、本当にアクティブなんですね~!

佐藤さん:結構みんなやってますよ!生活がシンプルで満員電車とかそういう体力使うところがないから。移動は5分でできるし。

かきの:やっぱり東京と生活スタイルはだいぶ違うかもしれませんね。

佐藤さん: たまに東京に行くとなんて忙しいところなんだろうって思います!新島は夏だと19時過ぎまで明るいんです。旦那さんは仕事が17時前に終わって、17時から19時まで趣味のサーフィンをしてました。

佐藤さん東京だと電車に乗る時間があるけど、その時間を豊かに使えるのがいい。

時間を豊かに使える新島ライフ

ホステルナブラでのインタビューの様子

かきの:新島ってゆっくり生活をしているイメージだったのですが、佐藤さんはとてもアクティブで想像と全然違うなって。

佐藤さん:東京の人みんな言います!私も来たときはそう思っていたし。島自体はのんびりしているのに、住んでいる人が忙しくしているって言うか。 働き者の人が多いかもしれない。

佐藤さんすごくゆっくり時間が流れていて。なんで新島にいるかって、時間を豊かに使えるから。

羽伏浦海岸の空
▲羽伏浦海岸の空。飛行機が飛んでいくのが見える。

かきの:お話を聞いていると、やりたいことをずっと叶えられているように見えます。今後の新しい目標や新島でやりたいことはありますか?

佐藤さん:まったくボディボードから離れちゃうのはちょっと寂しいなって思って。選手はやり切ったので、審判する方に興味があって、そっちで関わっていきたいっていうのが今の目標です。

かきの:プロになってお母さんになって、これからは審判になるんですね。

佐藤さん:私は常に目標がないと頑張れないタイプだから。

かきの:新しいことに向かって行動し続けられるのは、新島ならではですね。
ありがとうございました!

▼ボディボードスクールなどの詳しい情報はコチラ▼
佐藤さんInstagram

理容師 串田奈美さん

BarberOKIの店頭に立つ串田さん夫婦
▲串田奈美さん(右)と夫の隆さん(左)
串田奈美(くしだ なみ)さんプロフィール
東京都八王子市出身。新島在住の理容師。「Barber OKI」をご夫婦で営んでいる。
串田さんのご両親が営んでいた理容室を継いでいたが、ご両親が亡くなり、コロナや多忙な生活など様々な理由から新島への移住を決意。その後2021年4月に新島に定住し、今に至る。「Barber OKI」ではマッサージ用の特殊な石「バザルト®ストーン」を使用したエステや、理容室ならではの「お顔そり」が体験できる。

理容室「Barber OKI」を営む串田奈美さん。

東京の八王子で理容室を営んでいたなみさんは、今では旦那さんの実家がある新島で理容師として働いています。

コーガ石でできた建物を理容室として改装し、2021年8月から隠れ家サロン「Barber OKI」をオープン。

「Barber OKI」の母屋は民宿で、旦那さんのお父さんとお母さんが営んでいます。

民宿のお手伝いをしながら理容室の仕事もし、新島での生活を豊かに過ごしているようで、その裏側を覗かせてもらいました!

故郷を守る決断!不安がなかった理由とは

インタビューを受ける佐藤さん

かきの:元々なみさんのご両親の代から続いた理容室を、八王子で営んでいたんですよね。なぜ新島に引っ越してきたんですか?

なみさん:八王子では長沼ってところで、57年続いたお店を閉じて、主人の故郷に来ました。コロナ禍になっちゃって、人と会うこととかできなくなっちゃったでしょ?それは移住を決めるきっかけになったっていうか。先のこと考える時間が持てて、これを機に新島で生活するのもいいかなって。

かきの:寂しくはなかったですか?

なみさんいろいろあって移住を決めたし、私が言い出したことだから。みんなに驚かれるんだけど、私は何の不安もなく飛び込んできちゃった。

お店の入口に立つ串田さん夫婦

かきの:いろいろあって、というのは…?

なみさん 私は(自分の)両親が大好きだったし離れるのは考えられなかったんだけど、その結婚の背中を押してくれたのも、島の両親だったし。

かきの:島のご両親っていうのは、旦那さんのご両親ですよね。

なみさん思いのほか自分の両親を早くに亡くしてしまったから、1番は新島の両親と楽しく暮らしたいって思うようになって…。夏とかお正月にここに来ることが自分にとっての癒しだったから。

なみさん:いつか父や母に何かあったときにここを守る人がいなくなっちゃうじゃんって思ったら寂しくなっちゃって。 それがコロナの時にふと浮かんできたっていうか。 自分の子ども達も独立しているし。

移住の話をする串田さん

なみさん:移住したいと思ったときに(新島の)父と母に相談するじゃない?そうしたら「戻ってきてくれるのは嬉しいけど、本当にいいの?」って言われたよ。 「私がそうしたいって決めたんです」って言ったら喜んでくれた!

かきの:なみさんの大きな決断と、島のご両親の大きな包容力が素敵でかっこいいです!土地勘の不安とかもなかったですか?

なみさん:毎年夏やお正月に子ども達を連れて帰って来てたし、(島の)父も母もハイヤーと民宿で顔が広いしね

1から作るコーガ石の理容室

かきの:ここは民宿の一部を改装して、理容室にしたんですよね?

なみさん倉庫みたいになっちゃってたのを改装してお店にしました。

かきの:すごく綺麗なお店だからびっくりしました。1から作ったというのも大変そうですが…。

なみさん:島ならではの大変さ!何をするにも運賃が掛かるし、施工するにも職人を呼ばなきゃいけないし。もちろん内装とか電気の配線とかは業者さんにお願いしたんだけど、お水とお湯の配管と器具の設置とかは父と主人で(やった)!

かきの:すごすぎる!大がかりなDIYみたい!

なみさん:その間、私たちは母屋含めて3棟ペンキ塗りしたり、畑を手伝ったり、食事の支度は母がやってくれて、みんなで作ったって感じ。

女性の顔そりメニュー「つや肌コース」を体験!

お顔剃りをする施術台と体験するライター
▲エステをする施術台

かきの:「Barber OKI」では、男性はカットで女性はエステメニューを行っているんですよね。

なみさんうちは男性はカットとお顔そりをするんだけど、女性はお顔そりとエステをメインにやっています。

かきの:お顔そりの施術も従来のものとは違うんですよね?

なみさん:まったく違います!一枚刃のカミソリだけど、バーがついている特殊な形状で、お肌の表面を整えてくれる優しいお顔そりができるの。

かきの: やはり顔の印象は変わりますか?

なみさん:女の人は毛が薄いように見えるけど、口周りとか目の周りとかね。うぶ毛があるとくすんじゃうから。 メイクのノリが全然変わるよ!

お顔剃りに使うカミソリ
▲なみさんが使うカミソリ

なみさん:理容室で女性のお顔そりっていうこと自体がそんなにメジャーになってないけど、それを私は新島でやっていきたくって。 リラックスしてもらいたくてやってるから。

なみさん:昔は床屋さんって情報収集の場って言われていて、憩いの場なんだよね。

かきの:今の美容室や理容室はお店の人も忙しそうで、憩いの場というイメージはあまりないかもしれません。その思いはご両親が営んでいた頃の理容室の雰囲気に、憧れや理想みたいなものがあるからなんですか?

なみさん:あるある!古き良き昭和の時代の床屋さんを新島でなら作れると思って。

なみさん:内地で理容室やっていたら何万軒もあるうちの一軒だけど、ここに来た方が必要とされる場所っていうかね。

新島で送るセカンドライフ

串田さんタイムスケジュール円グラフ

かきの:定休日は月曜日となっていますが、それ以外はお休みはないんですか?

なみさん:基本的に月曜日がお休みで、それ以外は春休みとか秋休みとか、1週間がっつりお休みいただいて、全国の友達へ会いに行くようにしている~!

かきの:島に来てからゆっくりできているんですね!時間の使い方は変わりましたか?

なみさん:全然変わった!そのために来たようなもの(笑)。休日も仕事がある日も6時半に起きて、7時から民宿の手伝いをしてるの。

なみさん:ウォーキングしててもすれ違う人に声かけたり、みんな助け合って生活しているって感じがある。

かきの:八王子にいたときのお休みの日は何していたんですか?

なみさん:大体勉強会に行ってた。月、火の連休にしていたけど、そのうち1日は訪問理容に行っていたかな。

かきの:お店がお休みでもお仕事をされていたんですね。今の方がセカンドライフとして、ゆっくりした生活でも充実しているように見えます。

後世につなげたい故郷

インタビューを受けるなみさん

なみさん:(島の)父や母が長年築いてきてくれた場所だから、私たちが来ても「沖のお父さんお母さんには世話になってるよ」って言う人がいっぱいいて寂しくないしね。

かきの:ではなみさんも将来はそんな風になれたらな…という感じですか?

なみさん:繋げていきたいなと思って。子どもや孫たちがいつでも帰ってこれるように。

かきの:仕事もプライベートも充実していて、新島だからこそできる素敵なセカンドライフだと思います。ありがとうございました!

Barber OKI
営業時間 9:00~19:00
定休日 月曜日
電話番号 04992-5-2021
住所 東京都新島村3-8-3
地図 Googleマップ
公式サイト Barber OKI

隔てのない本当の肌を体感できる「お顔そり」

今回施術していただいた「つや肌コース」はもちもち肌になって、肌に手が吸い付くような感覚!

うぶ毛を剃ると化粧水の浸透もしやすくなり、いつものケアで今よりさらに美しい肌になれますよ。

使用するカミソリは優しいタッチだったので、目元や口周りの敏感な場所も安心して施術を受けられます。

新島で生活している方はもちろん、成人式や新島ウェディングの花嫁さんにも利用されることがあるようで、観光や出張で長期滞在している方にもおすすめです!

動画クリエイター 青沼宏樹さん

シアタールームに立つ青沼さん

青沼宏樹(あおぬま ひろき)さんのプロフィール
18歳まで新島で過ごす。教員や青年海外協力隊の経歴を経て、現在は新島にUターンし個人事業主として「NUMA FILMS」を設立。動画クリエイターとして新島での様々な映像やポートレート写真を制作・撮影する。
新島の活性化を願い、クリエイター同士が共鳴し合い”新しいが生まれる場所”として「スタジオなかにわ」というシェアスペースをつくる。

スタジオなかにわの3人

スタジオなかにわとは?
新島にあるシェアスペース。青沼宏樹さん、伊藤奨さん、石川茜さんの3人から作り出された”新しいが生まれる場所”。
クリエイターやアーティストが多く存在する新島で、アイディアを持ち寄り新しいものを生み出す場として2022年9月17日にオープン。
今後の活用例として、ハンドメイド品のフリーマーケットや作品の展示などがある。

18歳まで新島で育った青沼宏樹さん。

2021年4月にUターンして、動画クリエイターとしての活動や、物件を改装し「スタジオなかにわ」をオープンさせるなど新島のアピール活動を盛んに行っています。

離島で起業をするという大きな決断は、どうやって生まれたのでしょうか?

生まれ育った新島に選択肢を

青沼さんのインタビュー風景

かきの:Uターン組で、今では個人事業主として「NUMA FILMS」を設立し、動画クリエイターをしていると伺っています。起業することをきっかけに戻ってきたんですか?

青沼さん:元々新島は好きで、ずっと戻ってきたい気持ちがありました。でも島を出た後、もやもや感はすごくあったんですよ。原因は何かっていうと、島に仕事があるかっていうところ。

かきの:宿やスーパーなどのイメージですが、難しい気がしますね。

青沼さん: 島の悪しき伝統じゃないですけど、島に戻ってくることはかっこ悪いことみたいな。僕が学生の頃から(その雰囲気は)あって、最近の中高生に同じ質問したんですよね。やっぱり彼らもそういった思いはあるみたいで。

青沼さん:新島という狭いコミュニティで自分の世界は広がっていくのかなとか、好きだけど生きていく上で島に希望はあるのかなとか…。
僕だけじゃなくて島から出て行った人たちの多くはそう思っていて、好きだけど帰ってこれないみたいな。

かきの:新島が好きなだけに、もどかしい気持ちですね。

青沼さん:だから自分が島に戻ってくるんだったら、仕事がないって部分に選択肢を増やしてあげたいと考えました。今フリーランスでやってますけど、自分がビジネスモデルみたいな形で発信していけたら、若い世代に選択肢が増えるなと。

「人が好き」と「島が好き」が繋がる仕事

羽伏浦の海
▲羽伏浦海岸から見える波

かきの:元々は教育系の仕事をしていたと伺っています。映像のお仕事に行きついた経緯などはありますか?

青沼さんインスタをやっているんですけど、始めたきっかけが青年海外協力隊でモルディブっていう国に行っていて、その時に自分の日記みたいな形でやっていたんです。

青沼さん:子どもが好きで撮っていたんですよね。 何が好きって、自然な表情がすごい好きで。人の表情が僕は好きで、ずっとそれを表現していきたいっていうのがあって…。

かきの:だから今のお仕事でも人の思い出を撮影しているんですね。

青沼さん:協力隊の時は用意された仕事をやるんじゃなくて、自分で仕事を作っていくという作業だったんです。そこでゼロとかイチから見出す力みたいなのを培われたかなっていうのはすごくあって。

かきの:それが「NUMA FILMS」に繋がっているんですね。

新しい形でつくられた「スタジオなかにわ」

スタジオなかにわの創立メンバーをzoomでインタビューする様子

かきの:ここからは「スタジオなかにわ」の創立メンバーの3名をリモートでインタビューさせていただきます。

石川さん石川茜(いしかわ あかね)です。2拠点生活中で来年から新島でコーガ石を扱った彫刻家として生きていくところです。

いとーまんさんいとーまんです。東京の島で生まれ育って、東京の諸島で地域づくりというか、何かしたいって思って25歳で起業しました。

かきの:ありがとうございます。この「スタジオなかにわ」は3人で作ったんですか?

いとーまんさん部分的にですけど、できるところを自分たちでやりました。

かきの:何が1番大変でした?

石川さん:私、虫に強くなくて。真っ暗なところに入っていったり、いつ出てくるか分からないクモに苦労したって感じです。

zoomのいとーまんさん

いとーまんさん:そこで宏樹(青沼さん)中心に換気とか、人の生気みたいなのを復活させていくのは結構大変だったし、意識したことなんじゃないかなとも。茜ちゃん(石川さん)と僕は定住している訳ではないので、1年通い続けてやったというのは新しい形でもあるし。

かきの:1年通い続けた中で、新島ならではの魅力とは何だと思いますか?

いとーまんさんシンプルに人です。運気が明るいというか、フランクでもあるし、あったかい感じがあるなと思っています。集落がまとまっていること、実質上(景色が)明るい色をしているとかが、大きく絡み合ってああいう空気感が出ているんだろうなって思っていますね。

かきの:島の人はみんなオープンだなと感じます。

いとーまんさん:でも、もしかしたら人とのコミュニケーションが嫌いだから離島に来た人がいたら、それはミスマッチじゃないですか。それはそれで認められるような空気感があっても面白いなと。

いとーまんさん:僕らの個人で言えばがっつり地域と一緒にやっていく、いろんなところに顔出して人の話を聞くことが仕事でもあり、生活でもあり楽しさでもあり豊かさでもある。そういうスタイルで僕らは生きているということを、強要はしないです。

これからの「なかにわ」の在り方

zoomの石川さん

青沼さん:今なかにわをどういう風に使っていくかって考えているんですけど、フリースペースもあるし、プロジェクターもあるし。いろいろな活用の仕方はあるなと。

石川さんクリエイターという共通点を持った人たちを集めて、島にはハンドメイドをやっている人が結構いるので、庭でお店を出したりとか。私個人では雑貨販売と、石切り体験。自分で切ってお土産として持って帰れるような体験をしてもらえるような活動をしに行くというか。 

かきの:ここはこういうことも、あんなこともできるよって体現する場なんですね。

石川さんそうですね。私が彫刻をやっているだけで、ぬま(青沼さん)は動画クリエイターであったり、いろんなタイプのクリエイターがいると思うんで、ういう人たちが集まって何かが生まれていく場所になればいいなって思っています。

完璧じゃない同士が集まって生み出せるもの

スタジオなかにわの入口
▲スタジオなかにわの入口。新島の強い風に備えて地下部分に入口がある。

いとーまんさん:「なかにわ」は完璧な人たちが能力を発揮する場所というよりは、どうやったらいいか分からないだとか場所がないだとか、そういう人たちが集まって(何かが)できる場所。そういう環境を作ろう、そういう人たち集まれみたいなコンセプトがあって。

青沼さん3人の働ける場所として。その中で進みながら考えていったら、何か新しいものを生み出せる場所っていうのがなかにわです。

かきの:直接3人からお話を聞けて、ここはそもそも断定的な概念がない、可能性を広げる場所なんだなと思いました。石川さん、いとーまんさん、ありがとうございました!

よみがえったコーガ石の建物

スタジオなかにわの外観
▲スタジオなかにわの外観

かきの:では「スタジオなかにわ」の中を探検したいと思います!

青沼さん:ここは元々石造りの家でコーガ石を使っています。 オーナーさんの持ち物で、石の家を大事にしていきたいということで、僕らがそれを利用させてもらっています。

かきの:1階部分はシェアハウスみたいになっているんですね。

青沼さん:そうですね。茜ちゃんは月に1~2週間くらいいて、今の仕事をしながらコーガ石を彫ったりしています。1月からは完全にこっちに来てリモートワークしながら。

かきの:1つ空き部屋がありますね。

青沼さん:ここは誰でも入れるというよりかは、クリエイターのコミュニティの場所にしたいと思っていて。1か月以上の中長期滞在できる人にお貸しする準備をしています。 1階がシェアハウスで、地下がシェアオフィス的な感じです。

スタジオなかにわのアトリエ
▲地下にはアトリエやPCが使えるスペースがある

青沼さん:ここは茜ちゃんのアトリエとして、コーガ石を彫る場所です。

青沼さん:このコーガ石は、新島のおじいちゃんとおばあちゃんたちが、昔コーガ石で家を作ったりしたときの余った資材です。茜ちゃんが石を彫って何か新しく生み出したいってことで呼びかけて、うち全然使ってないからいいよって。

島の可能性を広げる

青沼さんタイムスケジュール円グラフ

かきの:青沼さんも「なかにわ」に住んでいるんですか?

青沼さん僕は実家があるので、寝るときだけは向こうに。

かきの:どんなスケジュールで1日を過ごしているんでしょうか?

青沼さん:午前中は事務所で仕事して、12時には1回家に戻ってご飯食べます。13時か13時半くらいにまた戻って、また17時くらいまで仕事してっていう感じ。

青沼さん:週に3回、小学生と中学生のJr.バレーのコーチをやったりだとか、金曜日には「こどもくらぶ」で写真を撮っています。島の人たちと地域貢献じゃないですけど、そういった時間が好きなので。

かきの:「こどもくらぶ」ってどんなことをするんですか?

青沼さん:学童みたいな感じです。高校生が来て小学生の子と遊んだりとか、中学生の子と遊んだりとか。

青沼さん:鬼ごっこしたり縄跳びしたり遊具を使って。 新島だと結構一般的なことですね。夏は海に行くんですけど、遊ぶ約束とかはしないです。そこに集まった人で遊ぶ。

インタビュー中の青島さん

かきの:子どもの頃からオープンマインドは築き上げられているんですね。だから、どこか安心感もあって青沼さんも戻ってこれたという思いもありそうです。

青沼さん不安がなかった訳ではないですけど、やっていける自信があった。甘えなんですけど、新島にも声を掛けてくれる人とか助けてくれる人がいて。

かきの:島全体でそんな関係でいられるなんて素敵ですね。

青沼さん今までは国や会社からお金出してもらったりとか、別にそれは悪いことじゃないんですけど自分らしくないなっていう。個人で働いて自分がやったことで、お金を稼ぐって方が生きているっていうか、自分のライフスタイルに合っている。

かきの:青沼さんの新しい働き方で、新島の将来の可能性が広がっていくと思います。

青沼さん:島は希望がないとか、働けないっていうイメージがあるからこその考えだと思うんで、それはなかにわとか、僕の仕事で変えていきたいなっていうのはあります。

▼詳しく知りたい方はコチラ▼

「NUMA FILMS」HP

「スタジオなかにわ」Instagram

新島での生活を体験できる「Flow life」とは

Flowlifeのロゴ

もしこの記事を見て、新島に興味を持ったという方がいたら、見ていただきたいサイトがあります。

新島への移住や定住、島での暮らしの手助けとなる情報を載せた「Flow life」です。

今回ご紹介した3名の方の他にも、新島に移住してきて新しい生活を送っている方がおり、そんな方々のコラムを見ることができます。

島暮らしの実際の生活や体験談、新島の家に住むまでの経過が書かれている、新島のリアルな声を集めたサイトです。

そして「Flow life」では本気で移住を考えている人のために、お試しで新島に住めるプランを紹介しています!

お試しで新島に住める「定住化体験住宅」

「新島に憧れはあるけど、どんな生活になるのか不安…」という方のために、島暮らしを体験できる「定住化体験住宅」の貸出プランです。

間取りは3LDKの広々とした平屋一軒家で、お風呂や洗濯機などの生活に必要なものは全てそろっています。

最短で1週間の住み込みができて、島で生活している雰囲気に触れることができ、新島の生活を疑似体験できるんです!

事前に運営者の方と面談等のやり取りがあり、そこで体験したい理由や、1人で体験を希望しているのか、家族連れかなどを相談します。

もっと本物に近い暮らしをしてみたくなったら「島暮らし体験プラン」もおすすめです。

職場体験住民の方や移住者の方との交流など、より深く新島を知ることができます。

旅行で行くときとはまた違う新島の顔が見られるかもしれませんよ。

申し込みについての詳しい案内は「Flow life」のサイトに記載があるので、ぜひチェックしてみてくださいね!

まとめ

新島のモヤイ像

住宅や役場などが近い場所にあり、人が密集している新島は、島の住人みんなが家族のように支え合って生活をしていました。

まさに「モヤイ(助け合い)の精神」を伺うことができます。

インタビューをしていく中で、3名の方に共通していたのは、新島のことを話すときは嬉しそうだったこと。

開けた風景の中で過ごす新島の人々は、新島の景色や海と同様大らかで明るく、自由でした。

島のために何かをしたい、故郷を守りたいなど、移住してくる人も新島のことを考えて行動を起こしており、なおかつ自分らしい生活ができる場所。

それが新島なのかなと思いました。

ハードルが高く感じる離島の移住も、一度新島に足を踏み入れたら魅力に気付いてしまうはずですよ。

 

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